「事務員1人の1日分の労働時間が節約できる」

大阪の一人税理士事務所「竹岡税理士事務所」が、手書き資料・独自形式資料・FAXが混在する小規模顧問先の年次決算業務にAIを導入。年間約500件仕訳の起票作業のうち主要科目を自動化し、手入力で要した4.2〜8.5時間相当(事務員1人の1日分の労働時間)を圧縮した事例です。

竹岡先生からの率直なフィードバック 「預かった資料をそのまま丸投げしただけ。資料不備の状態を考えると、全体的にはよくできている」――実際に出力結果を1件1件突合した竹岡先生からは、AIとの相性が悪い科目も含めて率直なフィードバックをいただきました。

本記事では、現場の生の評価を交えながら、一人税理士事務所が今すぐ着手できる決算業務AI活用の現実解をお伝えします。

お客様プロフィール

事務所名
竹岡税理士事務所 https://takeokazeirishi.com/
所在地
大阪府
形態
一人税理士事務所(所長1名)
顧問先数
30〜40件
使用会計ソフト
ICS(TISグループ)

今回の対象顧問先(A社)

対象案件のサマリー
  • 業種:卸売・小売業(売掛・買掛・売上・仕入が主要勘定)
  • 規模:小規模事業者(年間仕訳数約500件)
  • 帳簿の特徴:手書き資料/売上仕入は独自形式のエクセル資料/当座預金とクレジットカード(複数社)併用/賃金台帳は紙ベース
  • 課題:資料形式が統一されておらず、未経験パートが入力すると8時間以上かかる規模感

導入前の課題

① 一人税理士のキャパ限界(顧問先50件が物理上限)

竹岡税理士事務所では現在の顧問先30〜40件が手一杯で、業界共通の壁である「一人税理士は50件が限界」に近づきつつありました。新規受注の余地を作るには、既存顧問先1社あたりの工数を削るしかない状態でした。

② 手書き・FAX・独自形式の資料が残る顧客に時間が吸われる

A社のように、PC・インターネット環境が十分でなく、手書き伝票・FAX・独自形式の資料が混在する顧問先は、税理士事務所の現場では珍しくありません。顧客のDX完了を待っていたら事務所が先に倒れる――これは竹岡先生のヒアリングでも繰り返し出てきたテーマでした。

③ 繁忙期の派遣単価高騰と教育コスト

繁忙期に「領収書をExcelに起こす」程度の作業でも、派遣スタッフの時給は2,500円前後が相場。しかも翌年も同じ人が来てくれる保証はなく、毎年ゼロから資料の説明・過年度仕訳の説明をやり直す必要があります。

④ 1社の年次決算で約500仕訳超は「事務員1日分」相当

A社の約500件仕訳を手入力する場合の所要時間は、主観ですが人員のスキルレベルによって以下のように変動します。

入力者の習熟度1仕訳あたり所要時間約500件仕訳の合計時間
内容を熟知した所長クラス30秒約4.2時間
一般事務所職員(初担当)40秒約5.7時間
会計未経験のパート60秒約8.5時間

つまりA社1社の決算入力だけで、未経験パート人材1人の1日分の労働時間が消えていく計算になります。

LXを選んだ理由

竹岡先生がLXのアプローチに納得感を持っていただいた理由は、大きく3点ありました。

1. 既存の会計ソフト(ICS)を置き換えずに使える

会計ソフトを変更する前提のサービスは、現場のリスク・コストともに重すぎます。LXは最終出力をICSへインポート可能なCSV形式で渡す設計のため、既存の業務フローを壊さずに導入できました。

2. 顧客のアナログ運用を「変えさせず」、事務所側で吸収できる

「顧問先のアナログを変える」のではなく「事務所側でAI・OCRを使って吸収する」というアプローチが、現場の実情に合っていました。FAX・手書き・独自形式資料のままの顧客とも、関係を壊さずに事務所の生産性だけを上げられます。

3. 「全自動」を謳わず、税理士の最終判断を残す現実的な設計

「全自動で決算書が完成する」と謳う製品は、税理士目線で見ると修正工数がむしろ増えるケースがあります。LXはAIが起票した仕訳を税理士が最終確認する前提で、判断業務は人に残す設計にしています。

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具体的な施策|科目別のAI仕訳起票マップ

まず過去の決算書をベースにA社の仕訳ルール表を作成しました。その上で、作成年度においては勘定科目ごとに「AIに任せた範囲」と「人が判断した範囲」を明確に分けて運用しました。

勘定科目 AI処理内容 結果 備考
売上・仕入現金主義処理での自動起票
ほぼ完了
売掛金・買掛金は別途確認が必要
当座預金通帳データの自動取込
一部手動
相手先が資料に出ないためAIとの相性が悪い
クレジットカード
(銀行系VISA・信金VISA)
手書き資料からのAI読取+自動仕訳
ほぼ正確
手書きでも高精度を確認
預り金
(社会保険・源泉所得税)
賃金台帳からの自動引当
正確
「驚き」の精度との評価
給与関連役員報酬と給与の自動分離
正確
一般的なAIでは難しい仕分け
決算修正仕訳
(減価償却・消費税)
資料提供取込
一部手動
法人税・消費税の申告書連動は今後の課題

この施策設計のポイント

  • いきなり資料作成に取り掛かるのではなく業種や会社に応じたルールを作成したこと。同じ経費でも業種や会社によっては科目が異なるため、まず過去文から学習
  • AIに任せる科目と人が判断する科目を明示的に分けたこと。「AIで全部やる」ではなく、「資料形式が安定している科目から段階的に」というアプローチ
  • 既存の手書き資料・現金主義処理をそのまま受け入れたこと。顧問先側の運用変更を一切要求せず、事務所側で吸収する設計
  • 最終出力はICSへの取込CSVにしたこと。既存業務フローへの接続性を最優先

成果

① 約500件仕訳の主要科目をAI起票し、手入力工数の大半を削減

未経験パートが入力すれば8.5時間、初担当の一般職員でも5.7時間かかる作業の大半を、AIが起票しました。竹岡先生からは「事務員1人の1日分の労働時間は節約できていると言ってもいい」との評価をいただきました。

② 「事前説明コスト」も丸ごと削減できる

事務員に依頼する場合、入力作業時間そのものに加えて「事前に資料の説明や過年度の仕訳の説明をする時間」が必要です。AI活用ではこの説明コストが不要になるため、実質的な削減効果は表に出る数字以上だと考えられます。

③ 規模が大きい会社ほど効果が拡大

A社は小規模事業者ですが、仕訳数が増えるほど削減効果は線形以上に拡大します。顧問先50件中、年次仕訳数1,000件超の会社が10社あれば、年間で派遣スタッフ1人分以上の人件費に相当する効果が見込めます。

④ 「AIとの相性が悪い科目」が明確になった

これは数値以上に重要な成果かもしれません。A社の事例を通じて、「当座預金(相手先が資料に出ない)」「現金支払い経費(資料形式が不統一)」はAIに向かないことが明らかになり、今後の顧問先別の効率化設計に活かせる知見が蓄積されました。

お客様の声(竹岡先生のコメントより)

資料不備の状態を考えると、全体的にはよくできていると感じました。

預り金関係について、賃金台帳からの引っ張り、合っているのが驚き。

給与関係について、会社基礎情報などを基に役員報酬と給与を分けているのは凄い。

事務員1人の1日分の労働時間は節約できていると言ってもいいかもしれません。この小さな規模の会社の話なので、仕訳工数が増えるとその効果は更に大きいかと思います。

業界課題としてのフィードバック 率直に「AI仕訳を導入する以上、現預金の動きに基づいた仕訳作成にならざるを得ない点は、今後の税理士事務所業界の大きな課題」「現状では法人税や消費税の申告書ソフトで税額を計算しないと、未払法人税や未払消費税を決算書に計上できない。実務では決算書と申告書を行ったり来たりするので、1度で完全な決算書を作成するのは難しい」というご指摘もいただいており、これらは次回以降の改善テーマとして開発を継続中です。

今後の展望

竹岡税理士事務所との取り組みでは、以下の領域に拡張していく計画です。

  • 決算修正仕訳の自動化:減価償却費・消費税計算の資料連携を強化し、申告書との往復回数を削減
  • 発生主義処理への対応:売掛・買掛の月次発生主義仕訳をAIが起案し、税理士が承認するフロー
  • 複数顧問先への横展開:A社で確立した科目別マップを、他の小規模顧問先にも適用
  • 法人税・消費税申告書との連動精度向上:決算書↔申告書の自動チェック機能

一人税理士事務所が顧問先50件の壁を超え、新規受注の余地を取り戻すところまでを、継続的に支援していきます。

同じ課題を抱える税理士事務所の方へ

A社の事例は、決して特殊な成功例ではないと考えています。下記のいずれかに当てはまる事務所であれば、月数万円のAI利用料で、事務員1人分以上の労働時間が創出できる可能性があります。

  • 顧問先30〜50件で頭打ちになっている一人税理士事務所
  • 人手不足により従業員の担当件数が過多、残業が常態化している税理士事務所
  • AI導入したいものの、結局は何から手を付ければいいのか分からない税理士事務所
  • 手書き資料・FAXを未だに使用している顧客を抱えている事務所
  • 繁忙期の派遣費用が年々重くなっている事務所
  • 既存の会計ソフト(ICS・TKC・JDL・弥生・ミロク)を変えずにAIを導入したい事務所

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※本事例の数値・コメントは、竹岡税理士事務所の所長・竹岡先生からのフィードバックに基づき作成しています。顧問先(A社)の固有名詞・業種詳細は守秘義務の観点から一部抽象化しています。