フリーランスエンジニアが正社員で年収を下げない方法

「フリーランスから正社員に戻ると年収が下がる」——そう聞いて二の足を踏んでいませんか。結論から言うと、これは半分本当で、半分は誤解です。年収が下がるかどうかは「正社員に戻ること」そのものではなく、企業から提示される年収=あなたの市場価値で決まります。この記事では、①「額面」と「手取り」を切り分けて“下がる”の正体を整理し、②自社開発の正社員でも年収を下げずに戻るための条件を示し、③まず自分の市場価値(想定年収レンジ)を測る方法までを、有料職業紹介事業者(株式会社LX)の視点で解説します。

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フリーランスから正社員で「年収が下がる」と言われる本当の理由

フリーランスエンジニアの月単価は、正社員時代の「額面月収」より高く見えることが多いものです。だからこそ、正社員に戻る=提示される額面が下がる、という印象を持ちやすい。しかし、この比較にはいくつか見落としがあります。

額面が下がっても「手取り・実質」は変わらないことがある

フリーランスの報酬は、社会保険・年金・税金・経費をすべて自分で負担した“前”の金額です。一方、正社員の額面には見えないかたちで、次のような会社負担・上乗せが含まれます。

  • 社会保険料(健康保険・厚生年金)の会社との折半負担
  • 賞与・有給休暇・退職金・各種手当
  • 福利厚生・研修・学習支援などの投資
  • 売上の波(非稼働月・単価改定)や、確定申告・経理の手間からの解放

フリーランスの「月単価 × 12」がそのまま可処分所得になるわけではありません。国民健康保険・国民年金・消費税・経費・営業や事務の稼働も差し引く必要があります。つまり、額面の増減だけで損得は判断できないのです。比べるべきは、手取り・可処分所得、そして将来の年金や退職金まで含めた“実質”です。

それでも“実質”が下がる典型ケース

一方で、実際に手取りベースでも下がってしまう人には共通点があります。

  • 高単価の常駐案件に最適化しすぎて、市場で評価される「設計・成果・チーム開発」の実績を言語化できていない
  • 自分の市場価値を把握しておらず、企業からの最初の提示額をそのまま受け入れてしまう
  • 受託・SES的な業務に寄りすぎ、自社開発で効くスキルの棚卸しができていない

逆に言えば、ここを整えれば「下げずに戻る」余地は十分にあります。順番に見ていきましょう。

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公的統計で見る、正社員エンジニアの年収水準

「戻ると下がる」を感覚で語っても判断はできません。まず、正社員エンジニアの年収がどのくらいの水準にあるのかを、公的統計で確認しておきます。以下は厚生労働省と国税庁が公表しているデータです。

指標 数値 出典
システムエンジニア(Webサービス開発)の平均年収 578.5万円(平均年齢37.1歳) 厚生労働省 job tag(令和7年賃金構造基本統計調査)
同職種の有効求人倍率 2.57倍(令和6年度) 厚生労働省 job tag(ハローワーク求人統計)
給与所得者全体の平均給与 478万円(前年比3.9%増) 国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査

統計から読み取れる2つのこと

ポイントは2つあります。ひとつは、システムエンジニアの平均年収が給与所得者全体の平均を約100万円上回っていること。もうひとつは、有効求人倍率が2.5倍を超えている点です。1人の求職者に対して2.5件以上の求人がある状態で、採用側にとっては「買い手市場ではない」ということになります。

需給の見通しも同じ方向を向いています。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(平成31年4月公表)では、需要の伸びが大きい高位シナリオの場合、2030年のIT人材の需要は192万人に対して供給は113万人と試算されています。差し引き約79万人の不足です。この前提に立つ限り、経験のあるエンジニアが正社員として戻る際の交渉余地は、決して小さくありません。

※ いずれも公的統計にもとづく全体傾向であり、個々の企業が提示する金額を保証するものではありません。統計値は職種・年齢・企業規模などの条件が異なれば大きく変動します。

「フリーランスの方が有利」の前提も変わりつつある

もうひとつ押さえておきたいのが、取引環境の変化です。2024年11月1日に「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。所管は取引適正化が公正取引委員会と中小企業庁、就業環境の整備が厚生労働省です。

この法律により、発注事業者にはフリーランスに対する取引条件の明示、報酬支払期日の設定と期日内の支払い、買いたたきや不当な減額の禁止、ハラスメント対策などが義務づけられました。フリーランス側の保護が進んだ点は歓迎すべき変化です。

一方で、これは「フリーランスであることの相対的な自由度」だけで働き方を選ぶ時代が終わりつつあることも意味します。単価の高さや契約の柔軟さといった従来の比較軸に加えて、数年後にどんなスキルと実績が残るかで選ぶ視点が重要になってきました。自社開発の正社員という選択肢を、単価の上下だけでなくキャリアの積み上がりで比べてみてください。

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面談の現場から:単価と年収は、何で決まっているのか

ここまでは統計で全体像を見てきました。ただし、統計だけでは「自分の場合はどうか」が見えません。そこで、筆者が2026年にエンジニアやフリーランス支援の関係者と面談した中から、年収の判断に役立つ話を紹介します。

※ 面談でうかがった内容は、個人が特定されないよう年代・職種などの要素だけを残し、発言は趣旨を変えない範囲で読みやすく整えています。

副業の単価を「時給」に直すと、比べる軸が揃う

20代後半で自社プロダクトのリードを務めるエンジニアの方は、本業とは別に副業を1件受けていました。報酬の決め方をうかがうと、次の答えでした。

20代後半
エンジニア

今はもう時間じゃなくて、月あたり20万円でもらっています。

稼働は毎週土曜日と、平日の夕方に少し。月50〜60時間ぐらいだと思います。

月20万円を実働50〜60時間で割ると、時給はおよそ3,300〜4,000円です。一方で、筆者がその場で紹介した案件は、役割ごとに単価が分かれていました。

森岡
(筆者)

プログラマー、アーキテクト、PMの3つの階層があります。アーキテクトなら時給5,000〜6,000円ぐらいです。

つまり、同じ人でも「どの役割で入るか」で時給は1.5倍前後変わります。これは正社員の年収でも同じです。企業は作業時間ではなく、担う役割に対して報酬を決めます。

そこで、まず自分の月単価を実働時間で割り、時給に直してみてください。次に、応募先の想定年収も同じように時給へ直します。たとえば年収600万円で年間2,000時間働くなら、時給は3,000円です。こうして並べると、「額面が下がる」の中身が具体的に見えてきます。

「思ったより稼げない」から戻る人が増えている

次の話は、フリーランスのコミュニティを運営している方からうかがったものです。

フリーランス
コミュニティ運営者

フリーランスだったけど、思ったより稼げないから、やっぱり戻ろうかな、という人がいます。

ITの方だと、AIが進んできて、逆に正社員回帰が進んでいるといいますか。

フリーランスとして受けられるタスク的な仕事も、だんだんAIに代替されていって。

筆者自身も、フリーランスエンジニアのマッチングに約100名関わってきました。その経験から感じるのは、年齢が上がるほど案件の選択肢が狭まるという現実です。

森岡
(筆者)

いま40代の方を支援できても、10年後に50歳になったとき、同じように支援できるかというと難しいんです。

したがって、正社員に戻るかどうかは「今の単価」だけで決めないほうが安全です。5年後・10年後にどの役割で稼げるかまで含めて考えてください。気持ちの面で迷っている方は、フリーランスエンジニアが「疲れた」と感じたらも参考になります。

年収を最優先するなら、自社開発以外も比べる

意外かもしれませんが、年収だけを見るなら自社開発が常に有利とは限りません。先ほどの20代後半のエンジニアの方には、筆者から次のようにお伝えしました。

森岡
(筆者)

ベンダーやコンサル寄りの会社に行くと、事業会社より200〜300万円上がる人もいます。30代半ばになると、そうした挑戦はしにくくなります。

実際に、事業会社で600〜700万円だった方が、コンサル寄りの会社に移って800〜900万円になった例もありました。一方で、年収以外の理由で動く人もいます。30代前半で金融機関の内製開発を担うエンジニアの方は、こう話していました。

30代前半
エンジニア

年収はそこそこ、それなりにはもらっていると思うんですけど。

この方が転職で最優先したのは、年収ではなくキャリアの積み上がりでした。

また、30歳のフロントエンドエンジニアの方は、当初フルリモートを希望していました。しかし「年収が上がるなら出社も考えたい」と条件を広げた結果、応募できる求人の幅が大きく広がりました。このように、年収・働き方・キャリアのどれを優先するかを先に決めておくと、提示額に振り回されにくくなります。

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自社開発の正社員なら、年収を“下げずに”戻れる条件

「単価」と「市場価値」は別物

フリーランスの単価は、基本的に「稼働時間の切り売り」に対する対価です。これに対して正社員の年収は、事業への貢献・再現性・伸びしろに対する評価。評価の“ものさし”がそもそも違います。

自社開発企業が見ているのは、要件を数値で語れる力、設計判断の質、プロダクトやチームへの貢献、技術選定の妥当性などです。常駐単価では見えにくかったこうした価値が、むしろ高く評価されることも珍しくありません。「単価が高かった=市場価値が高い」でも、「額面が下がる=市場価値が低い」でもない、という点をまず押さえてください。

年収を下げないための3条件

条件 内容
① 市場価値を把握する 提示年収は市場価値で決まる。まず自分の“想定年収レンジ”を知る。
② 経験を「翻訳」する 受託・常駐の実績を、自社開発で効く「プロダクト貢献」の言葉に置き換える。
③ レンジで交渉する 単一の希望額でなく、根拠のある“レンジ”で提示・交渉する。

この3つは順番が大切です。②③はいずれも、①「いまの自分の市場価値」を起点に組み立てます。だからこそ、最初にやるべきは“測ること”です。

年収を下げないための3条件を積み上げるイメージ

まず、いまの市場価値(想定年収レンジ)を知る

提示年収は市場価値で決まります。90秒・登録不要の診断で、あなたの想定年収レンジとキャリアタイプが分かります。結果はその場で表示されます。

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※ 診断結果は市場データにもとづく想定レンジの目安であり、特定の年収を保証するものではありません。

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年収を落とさず“出戻る”ための実践4ステップ

  1. 市場価値を測る提示額を鵜呑みにしないための土台。まず想定年収レンジを把握し、交渉の基準線を持つ。
  2. 経験を「翻訳」する(職務経歴書)フリーランス期間は職歴として書けます。担当・役割・技術・成果を、自社開発で伝わる言葉で整理する。詳しい書き方はフリーランスエンジニアの職務経歴書の書き方で解説しています。
  3. 志望動機を整える「収入が不安定だから」で終わらせない。チーム開発・プロダクトへの当事者としての関与など、前向きな理由と貢献の根拠をセットにする。例文はフリーランスエンジニアの志望動機の書き方と例文にまとめています。
  4. レンジで交渉する/エージェントを使う根拠ある年収レンジで交渉。自分で言いにくい条件面は、有料職業紹介の担当を通じて調整する手もある。
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よくある質問(FAQ)

正社員への戻り方についての質問

フリーランスから正社員への“出戻り”は面接で不利ですか?
不利とは限りません。複数の現場・プロジェクト経験や技術力は、むしろ評価されやすい要素です。ただし「収入が不安定だから」などネガティブな動機のまま伝えると印象を損ねます。前向きな理由と、貢献できる根拠をセットで語りましょう。
何歳まで正社員に戻れますか?
30代であれば現実的な選択肢で、40代でも上流工程・マネジメント・技術選定などの経験を言語化できれば十分に可能性があります。年齢そのものより「再現性のある実績を説明できるか」が評価を左右します。
フリーランス期間はブランク(空白期間)扱いになりますか?
いいえ。フリーランス期間は職歴として記載できます。担当プロジェクト・役割・技術・成果を整理すれば、むしろ強みとしてアピールできます。

年収についての質問

自社開発は受託より年収が低いのですか?
一概には言えません。企業の事業フェーズや収益性、評価制度によって幅があり、ストックオプションや賞与を含めた総額で見る必要があります。
正社員に戻ると必ず年収は下がりますか?
いいえ。下がるかどうかは、企業から提示される年収=あなたの市場価値と交渉次第です。まずは想定年収レンジを把握することをおすすめします。
正社員エンジニアの年収相場はどこで確認できますか?
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」が参考になります。システムエンジニア(Webサービス開発)の平均年収は578.5万円と掲載されており、根拠は令和7年賃金構造基本統計調査です。求人サイトの掲載レンジは募集条件であり、統計値とは意味が異なる点に注意してください。

副業とキャリアの選び方についての質問

正社員になっても、副業でフリーランスの仕事を続けられますか?
企業の副業規定しだいです。実際に筆者が面談した方の中にも、正社員として働きながら業務委託を複数並行している方がいました。ただし、案件の調整が利かないと転職の時期を選べなくなります。応募前に副業の可否と条件を確認しておきましょう。
年収を上げたい場合、自社開発だけを狙えばよいですか?
いいえ。年収を最優先するなら、ベンダーやコンサル寄りの会社のほうが高い提示になる場合もあります。反対に、長く積み上がるスキルや働き方を重視するなら自社開発が向いています。優先順位を決めてから比較するのがおすすめです。
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まとめ

「フリーランスから正社員に戻ると年収が下がる」は、額面だけを見た誤解を含んでいます。実際に下がるかどうかは、あなたの市場価値と、その伝え方・交渉次第。やることはシンプルです——①市場価値を測る → ②経験を自社開発の言葉に翻訳する → ③レンジで交渉する。

その第一歩として、まずは自分の“想定年収レンジ”を知るところから始めてみてください。全体の進め方はフリーランスエンジニアが正社員に戻る完全ガイドで整理しています。

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この記事の一次情報源

  1. 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」システムエンジニア(Webサービス開発)(掲載数値の根拠:令和7年賃金構造基本統計調査/令和6年度ハローワーク求人統計)
    https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/314
  2. 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(令和7年9月公表)
    https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2024.htm
  3. 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(平成31年4月公表)
    https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf
  4. 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律/令和5年法律第25号・令和6年11月1日施行)
    https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited.html
  5. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
  6. 株式会社LX「エンジニア・フリーランス支援事業者との面談記録」(2026年7〜9月実施・筆者が聞き手)※個人が特定されないよう匿名化して引用
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